Statement

About

 言葉に代えることのできる思想や物語を絵に求められることが多く、描き手もそれを絵にしようとしているのではないか、と思うことが多くあります。

そうした話を聞くうちに、いつもつまらなくなって、私は人が見たものを「見たそのまま」に描くにはどうしたらよいかということにしか興味がないのだと気がつきました。

描きたいものは自然の風景の中からいつも見つかります。それは見ることの楽しさと難しさを感じるからです。
森の中に行けば、自分と木、さらに向こうの枝と枝、あらゆる距離のやり取りが幾重にも重なって目眩がします。風にゆれて形を変える水面のつくる形を追いかけるのは、スポーツと同じです。日が昇り沈む間に、色が何度も変わっていくのに何度でも驚き、それを捕えらないことに落胆します。
私は、2度と見ることができないものに囲まれていて、それを見ることにいつも必死です。そうして眼の運動をすることが好きで絵を描いています。

私がやりたいことは、本当にわたしの眼で視ること。それを残す方法を見つけること。
これだけです。

けれど、そこにもう一つ希望を持っています。
そうしてできたものが、誰かの目の奥の残像に、微かに触れることがあればいいなと思っています。
それが、人の心に物語を呼び起こす最初の刺激になるような絵が、世の中にはあります。何百年たっても、2度とこない瞬間が蘇ってくる絵があります。
そんな仕事を残したいという希望を心の底に持っています。